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Hope 〜注目の若手画家〜 #6 大久保佳代子

コンクールや公募団体展など、美術界では毎年のように期待の若手が輩出されています。「Hope」では、主に〈絵の現在 選抜展〉の受賞者で、画家として第一歩を踏み出した新人や若手作家にスポットを当て、制作に際して何を思い絵筆をふるっているのか、また、画家になるまでのことから、これからの展望などをご紹介します。

前回はこちら Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子

Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子

大久保佳代子先生

Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子

気持ちや性格を素直に表現できるのは桜だと感じはじめる。

Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子

オンライン教室のための動画を自ら制作。

Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子

『晴れた休日』 水彩30号
(2014年 絵の現在 第41回 選抜展 銅賞受賞作)

絵を描くことは心の癒やし

 「Hope」第6回は、大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)先生。
高校・中学校や絵画教室での美術講師をこなしつつ、2021年は3月に銀座・ギャラリー一枚の繪、7月に東京・京橋の画廊で、さらに10月末から地元・さいたま市の画廊と、たて続けに個展を開催。8月に新潟・雪梁舎美術館で開催された第23回雪梁舎フィレンツェ賞展で入選を果たし(10月には東京都美術館で巡回展が開催)、飛躍の1年となりました。作品制作、講義のご多忙の合間を縫って、お話をうかがいました。

 「絵を描くことは、私にとっては、生活の一部で自然な事。そして、心の安定です。波があるのですが、絵が上手になりたくて、がむしゃらに描いていることがしばしばあります。
プロなのだから出来て当たり前なのに、(納得出来るようなよい絵が)出来ないプレッシャーはいつも持っていますから。
でも私にとって絵を描くことは伝承とか発信とかそういう役割の物ではなくて、やはり、心の癒やしなのだと思う。描いているときは、時間が経つのが早いです。
今年の3月、ギャラリー一枚の繪で個展を開催させて頂いたのですが、そこでは、私から見たリアル(なモチーフを描いた作品)を沢山並ばせて頂きました。玉葱とか桃とかトウモロコシなど旬の物、季節の花だと、薔薇、コスモス、桜など、どれも特別な感じのものではありませんが、その季節にしか描けない旬なモチーフをじっくり見て、美味しそうに、そしてみずみずしく表現出来るととてもうれしくなり、今年も桃が描けて良かった、などと毎年同じ物を描けた満足した気持ちも表現されていると思います。
また、家族を描くことも好きな題材です。特に子供の成長過程を描いているときは本当に楽しかったです。透き通る肌の質感、純粋な瞳を見ていると、描いている私自身、癒やされていました。今は、身長も抜かれて、その頃を懐かしむ日々です。
そんな、何気ない日常の癒やしを私は描いています。
残念ながら(コロナ禍の影響もあって展覧会会場には)来客が少なく、課題の残る展覧会になってしまいましたが、めげずに、こんな時だからこそ、心に美術を、皆さんに届けていきたいとおもいます」

 展覧会のスケジュールは以前から決まっているものなので、コロナ禍に個展を開催しようなどとは夢にも思わなかったことでしょう。大久保先生ご自身の語られたように、「特別な感じ」ではない日常の、毎年やってくる四季折々に目にする花や野菜、果物などが、描き手の歓びまでも彩色されたかのような作品に囲まれた展覧会会場は、奇しくもこのコロナ禍の時期、日常の美というものを感じさせる、いや増すばかりの輝きに満ちた空間となっていただけに、外出を自粛せざるを得ない期間の開催はとっても残念なことでした。


身近な物を対象に、思いを託して描く

 「得意なモチーフは、身近な物、野菜、果物、花、家族です。特に季節物を描くのが好きです。構図は日常の動作から思いつくことが多いです。毎日の献立を考えるように、静物を組んで画面を構成しています。
私は、イメージだけで絵を描くことが苦手で、実際の物を見て、そこからイメージを膨らませていくのがいつものやり方です。
組んだモチーフに自然光があたり、陰を付け立体が浮かび上がると、創作意欲が湧きます。
大作のテーマとして、《木漏れ日》、《ひととき》、という題名の作品を何枚も描いています。《木漏れ日》は、西日の暖かい光を浴びる子供の成長する姿と、移りゆく季節を大樹と共に作品にして来ました。夏と冬では全く雰囲気の違った作品になるのですが、特に冬の木立では、木の影が四方八方長く伸びる様が面白くて好きです。《ひととき》は、子供の仕草や表情を自然体で描く作品です。このところ、子供もすっかり成長して、モデルをしてくれる時間も無くなり、自分をモデルに描くことが多くなりました。老いていく自分の気持ちや性格など、素直に表現できる背景は[桜]だと感じはじめても来ました。
2019年、群馬県甘楽(かんら)町に出かけた際、河川敷のしだれ桜に魅了され、それを描きたいと思うようになりました。
地面を引きずるように咲く桜をつかみ、ふんわり艶やかな桜を見て、なんて美しいのだろうと思いました。桜は満開で、全体の景色が白く雲の中にでも入ってしまったのかと思うほど、ふわふわで感動しました。満開の桜を見ていると、感動するのです。ふわふわの桜の花に癒され、気分が良く明るくなって、会話が弾みます。
また、風でゆらゆらと揺れる様子や桜吹雪で、目の前が白く花びらが舞う様子に、ただただ、感動してしまいました。
桜の木の下を、ぶつからないようにかがんで上を見ながら歩く光景が、いつも忘れられなくて、そういう日常のひとときも描きたいと思います。
いろんな物をいろんなシチュエーションで描いてみたい願望はあります。今は、桜をうまく表現したい、と思うようになりました。満開の桜も、その豪華さを、この頃の自分に引き合わせても、違和感なく表現できる年齢になったような気がしています(笑)。
さらに、人物とコラボさせることで、もっとすてきな桜が描けるのではないか、人物の心情も、桜によって表現してみたいと思います」

 そうした思いを昇華させた作品は、2020年改組新第7回日展出品作品の『桜花爛漫』や前述の、今年開催されたフィレンツェ賞の入選作品『月明りふんわり桜』だったのでしょう。
春の光風会展と秋の日展。年に2度、大作を描いている大久保先生。大作を1年のうちに2点制作するのは、学校や教室でのお仕事をしながらですと、相当ハードなのですが、今年はフィレンツェ賞展(応募規定S100号以内のサイズの作品)にも出品。その理由は、

「光風会と日展の年2回あり、それに合わせて制作をしてきて、もう、自然と人物の大作を20年以上描き続けているのですが、人生の節目というか、ここへきて、チャレンジできる事は、今のうちにやっておかないと、だんだん少なくなるのかもと感じました。ならば、もっと色々なことを自由に表現してみたい」

ことだったそうです。今年は春から夏にかけて2回個展を開催し、その間に光風会展と、多忙を極めた一年の前半でしたが、疲れを感じさせず大きな紙に水彩で描き続けるエネルギーの源泉はどこからくるのでしょうか。

水彩表現の可能性を信じて

 大久保先生は埼玉県生まれ。多くの画家と同様、小さい頃から絵を描いたりものを作ることが好きだった少女でした。高校生になると、地元の県展へ出品するようになりすぐさま入選。人物画で大作を描いたのはこの頃からだったそうです。武蔵野美術大学へ進学すると、人物をモチーフに「いろいろ手法や形を変えて表現することを楽しんでいました」と、研鑽を積んでいきました。

 

 「高校3年生のころ、美大受験のため、池袋の某美術予備校にかよっていた時期のことを思い出しました。
当時、西武池袋本店に入っていた本屋さんに電車の待ち時間など、ちょっとでも時間があると立ち寄っていて、洋書の画集をあさっては読み込んでいました。隣は、現在はなくなってしまったセゾン美術館で、大きな企画展や安井賞展など、はやりの展覧会がいくつも開催されていました。
私も多感な時期だったので、何に関しても興味津々でしたから、あらゆるジャンルの展覧会やら画集などをしらみつぶしに見ていた時期。(学生だったころは)お金はないのですが、時間だけはあったので、暇があると美術館をはしごしていました。
その中でも一番印象にのこっているのは、1990年に開催されたセゾン美術館の「アンドリュー・ワイエス展―ヘルガ」と、1993年、東京ステーションギャラリーで開催された「バルテュス展」です。
ワイエスのテンペラ画の『ヘルガ』を見たとき、今までに見たことのない細かい点描やハッチングを見てなんかすごいと思いました。血管が浮き出ている手の描写を見ていても、年齢や職業がわかるほどの描き込み、表現に感動していました。また、水彩画の作品には筆勢があり、空間の斬新さに圧倒されました。全部すごくて感動しました……。今も忘れられません。
今思い返すと、油彩から水彩に画材を変更したとき、不安もあったけど、『ヘルガ』の作品を見ていたから、水彩の可能性を信じて、自信を持って、自分なりの素直な表現をしてこられたのかもしれません。
現在、水彩画家として、技法や水彩の楽しさを伝えている日々ですが、ワイエスの作品が私にやる気と感動と癒やしを与えてくれたことが一番の成果だと思います。
また、実は私、アンドリュー・ワイエスさんと誕生日が一緒なんです(7月12 日)。それを知ったときから、私の中では勝手に心の友達のような師のような存在となり、自慢のネタとして、たまに話題のなかに登場するんですよ(笑)。
「バルテュス展」は、東京ステーションギャラリーが、まだ改装前の古びたレンガの壁と作品の色や雰囲気がとても良く合っていて、特に気に入った展覧会でした。少女の作品が好きで、構図などを参考にしたいと思って、画集を良く眺めていました。
長女が生まれて、あまりのおてんばに手を焼きましたが、バルテュスをの構図のように足を広げたり、組んだり、ばたばたしたりと、日常の動作が、バルテュスの描く少女のようだったので、そのまま描いたら、バルテュスの絵のようになって、ちょっとうれしかったことを思い出します。あと、バルテュスの作品によく出てくるカウチソファーが欲しくて、家具屋へ見に行ったりしました。購入はしなかったけど、《ひととき》の作品の中には、子供が自然とソファーに座ってくつろぐ様子を描いています。
私の作品の《ひととき》と《木漏れ日》は、2人の巨匠の作品へのあこがれから来ているのかもしれません」

高校時代から出品していた県展ではその後、美術家協会賞(2008年)、県知事賞(2010年)を受賞。現在も出品を続けている光風会展では奨励賞(2010年)を受賞し、同年、日展(第42回)に初入選と飛躍一年を過ごしました(日展ではその後、2020年に会友に)。そして2014年、絵の現在 第41回選抜展で銅賞を受賞し、「一枚の繪」での活躍が始まりました。
転機になったのは、現在も作品のモデルになっているお子さんが生まれたこと。

 「転機が訪れたのは、家族ができたことです、長女が生まれ、専業主婦(当時)となり家事と子育ての合間にデッサンやクロッキーを描き、それを作品にしていきました。赤ちゃんの頃から長女を描いていたので、本人も身構えることなく、(制作している)私のことをぜんぜん気にせず自然体でいてくれたので、どんな絵を描いても表情が固くならずにいてくれたことはとってもありがたかったです。子供の表情は、目が澄んでいてまっすぐなんです。
成長して中学生になると、なかなかモデルになってくれなくなり、ここで長男登場です。おっとりした性格で、お姉ちゃんの後を追いかけていましたね。時代なのか、屋外で遊ばないで、家でゲームをして遊んでいましたのでよくクロッキーをしていました。
そうして描くにつれ、外へ、公園や雑木林のあるところなどに散歩へ行ったりして、現在大作のモチーフになるようなものを描くようになりました。
当たり前かもしれませんが、毎日毎日、子供の笑顔と寝顔を独占した生活をおくっていって、いろいろな表情に出会い、描くことができました。(中略)
現在は、常に制作中心で、美術教師や絵画教室で指導をし、日常生活は何となくこなして、あとは制作時間に充てるようになりました。個展の予定がなくてもやっぱり描いてないと、落ち着かない感じです」(2020年 一枚の繪HPの取材記事より)

 「絵を描くことは、私にとっては、生活の一部で自然な事」という大久保先生。ご家族がモデルになるのもまた、「自然な事」であり必然だったのでしょう。

 
Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子

『収穫祭』 水彩6号大(「一枚の繪」
2017年11月号連載〈水彩画教室〉掲載作品)

Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子
『わさび園の水車』 水彩5号大
(「一枚の繪」2018年8月号掲載作品)
Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子  
『午後』 水彩6号大(「一枚の繪」2021年6・7月号掲載作品)
こちらの作品はオンラインショップでお買い求めいただけます
Hope 〜注目の若手画家〜 #5 中村祐子  

『窓辺で』 水彩6号大(「一枚の繪」2021年8・9月号掲載作品)

 
 

コロナ禍でも出来ることを

 昨年春から、これは聞かなければいけない質問になってしまった、このコロナ禍でのご活動については、

 「コロナ禍になり早1年と6ヶ月、色々なことが変わり始めて、ついて行くのがやっとと言うのが、正直な気持ちです。昨年の3月、突如沸いた新型コロナウイルス、そこから3ヶ月家族全員が家に居るという、お互い気を遣いながらの、自粛生活が始まりました。連日の報道を見ながら、家族がリモート出勤している姿を見て、“職場に行かなくても、仕事って出来るんだなー”と漠然と見ていました。私にとっては、突如始まった苦肉の策なのかと思っていたのですが、案外うまくやっているように見えました。ダメもとで私もやってみよう! と思いました。
そして、オンラインで絵画を学ぶにはどうしたらいいか、考えるようになりました。
ホームページやフェイスブックなどの情報収集や、どうしたら生徒さんに絵画を続けてもらえるか、今までの教室スタイル以上に、レベルが高く、満足してもらえるにはどうしたらいいのか。そもそも、生徒さんは高齢者が多いのでデジタル機器を使った教室を受け入れてもらえるのか……不安は増すばかりでした。
でも、こんな時だからこそ手をこまねいてはいられないと、思い切って「オンラインでやってみませんか?」と電話連絡した事がきっかけで、手探りではありますが2020年6月「オンライン絵画教室」を開講することになりました。
最初は、初歩的な機械の操作で色々トラブりました。その度にみんなで解決したりして、繋がるだけで、感動して、新鮮で、わくわくしました。生徒さんも、わくわくしてくれていたと思います。
その次は動画制作です。コロナ禍でなければ絶対に挑戦しなかったです。
コロナ禍以前は画廊でデモンストレーションを実際に披露して、観客に生の制作過程を見て頂く。という、ショーをやっていたのですが、無言で淡々と制作をして最後に作品説明をするスタイルでした。自分の主宰する教室でもたまにやっていたのですが、そういった指導も出来なくなり、生徒が作家のテクニックを見る機会が無くなってしまうと感じました。生徒さんは私の何を見ているのかわからないけど、デモをしたあとは、『すごく勉強になりました』と、とても満足して帰られるのです。
私も、生徒さんがいると緊張しますし、プレッシャーもあります。その張り詰めた緊張感が影響を及ぼすのか、とてもいい絵になるのです。それを形にし、絵画を楽しく学ぶための、解説付き動画の作成を試みました。
ここでも、また、動画を作るための検索の日々で、パソコンにかじりつきでしたね(笑)。
その甲斐あって、課題動画として配信する事が出来るようになりました。
やってみると、私が描いている動画を最初から最後まで解説付きで見ることが出来るのはとても勉強になるようで、生徒さんは、とても喜んでくれます。現場での緊張感はないけれども、何回も繰り返し見ることが出来るのが良いそうで、生徒さんは以前より、めきめき上手になっています。
また、事前準備をして、絵画に対する理解や、文献などを見ながら、生徒さんにとって、有益な情報を届ける努力もしています。直接手を入れて指導することが出来ないので、理解しやすくするための言い回しなども考えながら親身な授業を目指しています。
人と会うことがリスクになるコロナ禍で、オンラインで心豊かに自由な世界を描ける環境は作れるのだなと、感じました。
最近は、グループの場合は全員参加型で、(一人一人が)主体的に行っています。そうすることで、色々な作品に対して理解を深めることが出来ます。個人の場合はレベルに合わせて指導を受けることが出来ます。
まだまだ手探りですが、オンライン絵画教室も楽しくやっています。
制作以外では最近、スパイスカレーにはまっています。家庭菜園にトマトが鈴なりで、活用法を考えたら、カレーならいくらでも食べられそうだなと思って挑戦しました。ここでもネット検索大活躍です。玉ねぎを炒め、調べたスパイスと調味料を加え、自家製トマトを投入……。これで出来上がり。案外簡単にできておいしいので、すっかりはまってしまいました。そんなに辛くないのですが食べた後、汗が出てきて、スパイスの効果がわかります。お好みで、チキンカレーにしたり、キーマカレーにするのですが、私は、マイルドよりスパイシー派なので、お肉の変化程度にとどめて楽しんでいます。今では、うちの冷蔵庫に常備菜としていつも入っています」

コロナ禍の状況下だったからこその気付きや、オンライン講義などあらたな指導方法をとったことによる教授方法の深化は、生徒、先生ともども自身の目指す美への階梯を一段上がらせてくれたかのようです。
そうした気付きは、

「美術科の学校教材の中でユーミンが、心に美術を持っていると毎日が楽しいよ。と言っていたのを思い出し、私も共感して、生徒に日常の何気ないことで美しいと感じる物があるかを聞いたりしました。心が動き、よくわからないけど涙があふれてくるようなことに直面したり、空を眺めて大きく深呼吸してみたら重い気持ちが少し軽くなったり、ほんのちょっとの感動が、気持ちを豊かにしてくれるということを皆で共有するようになりました。
環境は人それぞれ違うけれど、日常のちょっとしたこと、毎日のお弁当や、朝のヘアースタイル、化粧など、上手に出来たら一日うれしいでしょ! 季節によって変わる風景、その時々の気分や異なる場面毎によって、色々想像する事も楽しいよね。朝日がきれいだったら素直に感動して、めちゃくちゃラッキーと思うこと。
そして、みんなもっと自由に色々なことを表現して、感動したり、気づいたり、思いやりをもったり、心の癒やし、プラス思考で、前向きに生きていこう! と、美術制作を通して、楽しさを伝える毎日です」

と、「毎日の献立を考えるように」モチーフを構成して描く大久保先生。
日々の暮らしのなかに垣間見られる美によって得られる「ほんのちょっとの感動が、気持ちを豊かにしてくれる」ということを、このコロナ禍になる以前から作品で表現してきていることに、これまで大久保作品を見続けてきた私たちは、あらためて気付かされるのです。


自分の作品のリアルを追い求めて

 水彩で作品を発表し続ける大久保先生。最後に、水彩画の魅力おうかがいすると、

「水彩画は奥が深いです。最近SNSをよく見るのですが、世の中には、色々な表現をする人がいるのだなと、改めて、水彩のファンの多さに驚かされます。また、テクニックやテーマについても様々で、はっとする作品が多いです。
 絵を描くことは、写真とは違って、描きたい部分を自分で設定して、画面の強弱を操作してイメージを膨らませる。そして仕上げていくのだけれど、上手な作家さんの動画を見ていると画面にピリッと緊張感があり、今にも動きそうな自然な感じに仕上がっているんです。手数も少なく、何度も描き直したりしないで、一発で仕上げていくんですよ。まさに、超絶技巧です。そういう動画とか、(制作している)写真を見ていると、どうすればこうやって描けるのか、やってみたくなります。実際にやってみると、それっぽい感じになるけど、やっぱり、なんか違うんですよ。紙に浸した水の量、絵具の濃度、絵具を載せるタイミングなど、いろいろと違うんだけど、少しでも上手になりたいから、いろいろやってみています。
 でも、水彩画の魅力は、テクニックだけじゃなくて、自分の作品のリアルを追い求められることです。そのための表現の仕方を習得すること。まだまだたくさんありますが、今は、自分が求める水彩画のスタイルにたどり着く努力を続けています。まだまだ時間がかかりそうですが……。とにかく、毎日できることをやって、少しでも心に響く作品ができると信じて、取り組んでいます」

 技術は作家が表現したいものを画面に表すための手段。日々の修練を欠かすことができないのはもちろんですが、水彩は大久保先生にとって「自分の作品のリアルを追い求められる」画材なのでしょう。自分自身の、そして、観る者にとっても「心の癒やし」となる作品を、大久保先生はこれからも描き続けます。



> 大久保佳代子先生ホームページ(10/30〜開催個展情報アップ!)
> オンライン教室案内

おおくぼ・かよこ
埼玉県生まれ

(略歴)
武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業
1987年 第30回埼玉県展初入選
1998年 第84回光風会展初入選(以降、毎年出品)
2000年 第43回埼玉県北美術展知事賞
2002年 第45回埼玉県北美術展45回記念賞(会員推挙)
2004年 第10回オランダ紀行朝日チューリップ展サンツアーズ賞
2008年 第56回埼玉県展美術家協会賞
2010年 第96回光風会展奨励賞、第60回埼玉県展知事賞、個展(熊谷八木橋 13、15、17年)、第42回日展初入選(〜12年)
2014年 第41回 絵の現在選抜展銅賞
2015年 改組 新 第2回日展入選(16、18〜20年)
2017年 「一枚の繪」4月号より、誌上水彩画教室連載(〜20年4・5月号まで)
2019年 Fabriano in aquarello 2019(イタリア)
2020年 日展会友推挙
2021年 Malaysia international online juried art competition TOP80賞、個展(銀座・ギャラリー一枚の繪)、第23回雪梁舎フィレンツェ賞展入選(雪梁舎美術館〈展示終了〉、上野・東京都美術館〈10/24〜/30〉)、Fabriano in aquarello 2020、2021(イタリア)
埼玉県展、個展、グループ展等多数
現在 日展会友、光風会会員、埼玉県美術家協会会員、ZOOM遊彩人主催、私立高校・中学校美術教員

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