絵を描くことは心の癒やし
「Hope」第6回は、大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)先生。
高校・中学校や絵画教室での美術講師をこなしつつ、2021年は3月に銀座・ギャラリー一枚の繪、7月に東京・京橋の画廊で、さらに10月末から地元・さいたま市の画廊と、たて続けに個展を開催。8月に新潟・雪梁舎美術館で開催された第23回雪梁舎フィレンツェ賞展で入選を果たし(10月には東京都美術館で巡回展が開催)、飛躍の1年となりました。作品制作、講義のご多忙の合間を縫って、お話をうかがいました。
展覧会のスケジュールは以前から決まっているものなので、コロナ禍に個展を開催しようなどとは夢にも思わなかったことでしょう。大久保先生ご自身の語られたように、「特別な感じ」ではない日常の、毎年やってくる四季折々に目にする花や野菜、果物などが、描き手の歓びまでも彩色されたかのような作品に囲まれた展覧会会場は、奇しくもこのコロナ禍の時期、日常の美というものを感じさせる、いや増すばかりの輝きに満ちた空間となっていただけに、外出を自粛せざるを得ない期間の開催はとっても残念なことでした。
身近な物を対象に、思いを託して描く
そうした思いを昇華させた作品は、2020年改組新第7回日展出品作品の『桜花爛漫』や前述の、今年開催されたフィレンツェ賞の入選作品『月明りふんわり桜』だったのでしょう。
春の光風会展と秋の日展。年に2度、大作を描いている大久保先生。大作を1年のうちに2点制作するのは、学校や教室でのお仕事をしながらですと、相当ハードなのですが、今年はフィレンツェ賞展(応募規定S100号以内のサイズの作品)にも出品。その理由は、
ことだったそうです。今年は春から夏にかけて2回個展を開催し、その間に光風会展と、多忙を極めた一年の前半でしたが、疲れを感じさせず大きな紙に水彩で描き続けるエネルギーの源泉はどこからくるのでしょうか。
水彩表現の可能性を信じて
大久保先生は埼玉県生まれ。多くの画家と同様、小さい頃から絵を描いたりものを作ることが好きだった少女でした。高校生になると、地元の県展へ出品するようになりすぐさま入選。人物画で大作を描いたのはこの頃からだったそうです。武蔵野美術大学へ進学すると、人物をモチーフに「いろいろ手法や形を変えて表現することを楽しんでいました」と、研鑽を積んでいきました。
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