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Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子

コンクールや公募団体展など、美術界では毎年のように期待の若手が輩出されています。「Hope」では、主に〈絵の現在 選抜展〉の受賞者で、画家として第一歩を踏み出した新人や若手作家にスポットを当て、制作に際して何を思い絵筆をふるっているのか、また、画家になるまでのことから、これからの展望などをご紹介します。

前回はこちら Hope 〜注目の若手画家〜 #2 湯澤美麻 >>

Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子

村山美代子先生

Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子
『わたしはもう理由もなく不安になったりしないわ』 日本画30号
(2014年 絵の現在 第41回 選抜展 銅賞受賞作)
Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子
『秋待つと』 日本画P8号
(「一枚の繪」2016年12月号掲載、表紙作品)
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Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子
『オルテンシア』 日本画P10号
(「一枚の繪」2017年9月号掲載作品)

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喪失感や無常感という
制作テーマを客観的にみたパリの1年


 「Hope」第3回は、村山美代子(むらやま・みよこ)先生。
 「一枚の繪」2021年4・5月号より、誌上日本画教室の連載をスタート。5月10日〜22日にかけ、東京・銀座 ギャラリー一枚の繪で3年ぶり2回めの個展を控えるなか、お話をうかがいました。

 「フランスで世界中の様々なアーティストと接して、表現することにもっと自由でいたいと思うようになりました。日本画は静のイメージがあるのですが、動の表現もしていきたいと思います。完成した作品だけでなく、そこに至るまでのものなども見せていけるような展示の仕方も模索してみたいです」

 村山先生は、2018年春から、パリのCite internationale des artsに1年間滞在。日本にいると、日本画、油彩画などのジャンルでつい縦割りになってしまう美術界(全部が全部そうなってはいないのですが)とは異なる、ひとつ、アートでくくられた作家たちとの邂逅によって、ブレイクスルーされたようです。

 「私が海外へ行こうと思った目的は、制作のテーマでもある喪失感や無常感を、文化の違う国々では人々がどのように感じるのかを知りたいということでした。
 フランスの乾いた空気の中では、ものの色合いが日本とは違って見えたり、感情の表現もどこかさっぱりしているように感じました。その影響は大きいと思います。画面の色合いと、込める想いの湿度が変わりました」

 これまでの村山作品と、パリから帰国されてからの作品。これまでご覧いただいた方にとっては、見どころに満ちた5月の個展になりそうです。

自分を表現する術を得て

 村山先生は、東京生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業。佐藤太清賞公募美術展入選、練馬区民美術展教育長賞、同展区長賞、ACTアート大賞佳作と、評価が徐々に高まり、2014年、一枚の繪主催、絵の現在第41回選抜展で銅賞を受賞され、「一枚の繪」誌上でも作品を掲載させていただくことになりました。個展やグループ展も数多く、現代日本画の人気作家のおひとりともいえる活躍をみせております。
今現在の村山先生をみると小さい頃から絵が大好きで、画用紙に限らず砂場でも絵を描いていたのではないかと推察してしまっていたのですが、

 「子どもの頃、夏休みの絵画コンクールで表彰されて色鉛筆をもらったような記憶があります。でも特別絵が好きだったわけではなく、図工はどちらかといえば苦手でした。
何かを表現する世界を身近に感じていたのは、幼少期から続けていたバレエが影響していると思います。バレリーナを目指しバレエ学校へ通っている子もたくさんいて、自分も将来はそうなるのかなと漠然と思っていた時期もありました。
成長するにつれ、学校生活が苦痛になっていて、自分の座る席がそこには無いように感じていました。どうしてそうなのかなと模索していて絵を描く世界にたどり着きました。自分を表現する術を得てみると学校も一転楽しくなり、私にはこれが必要だったんだなと思いました」

 表現者は時としてまわり道をして為すべきことにたどりつくことがありますが、身体芸術のバレエをなさっていたという経験は、先生を本当の居場所に誘ってくれ、今も佳き影響を与えてくれるものとなっています。人物画に見られる、ふとしたしぐさの表現のたおやかなリアルさは、観る者の網膜にそっとやさしく琴線を鳴らしてくれます。

 「影響を受けた画家はアンリ・ルソーです。画家としての在り方に憧れます。自分の思うように世界を感じて描いているところがとても好きで、私もそうなりたいと思っています。
美意識について影響を受けたのは塚本邦雄でした。
大学では入学式の時の平山郁夫学長の言葉が胸に残っています。自分を磨いていく指標になっていると思います。
学生時代は自分の絵を模索する中で、絵画でない世界から発想を得ようとしていました。琴線に触れるものを端から収集していて、古書店に入り浸ったりしていました。そこから枝葉が伸びていって、幅広いジャンルから好きなものを選りすぐって今の自分の絵があると思います」

 画想を膨らませてくれるものは、目の前に、画家の画想のおもむくままにどこにでもある、ということをあらためて思わせてくれる村山先生のお言葉は、日々の暮らしを真摯に見つめる画家の背中を見せてくれます。
また、

 「絵を描くことは言葉と同じような感覚です。思っていることを伝えるのに、しっくりくる表現が絵だったのだと思います」

と、読書好きな村山先生ならではのお言葉。影響を受けた詩人(歌人)に短歌界の巨星、研ぎ澄まされたことばをときに綺羅びやかに、ときに鋭い措辞で三十一文字を詠い上げた塚本邦雄が口をついて出てきたことは印象的です。

 
Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子  
『ある晴れた日に』 日本画8号
(「一枚の繪」2020年8・9月号掲載作品)

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Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子
「その時々に感じたことを人物や植物に
投影して描いている」という村山先生。
 
 
Hope 〜注目の若手画家〜 #3 村山美代子  
『0地点より』 日本画6号(2021 年個展
〈村山美代子日本画展 - Les bons temps - 出品作品)
 

絵を描くことは自由
記憶のなかの美しい瞬間を意識して描く

 昨年から続く新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために、世界的な外出制限や経済活動の停滞による影響は、美術界にも大きな痛手を受けております。
もはやあいさつのようにお聞きしてしまうのですが、村山先生にこのコロナ禍でのご活動や、影響をおうかがいすると、

 「これまで当たり前だったことがそうでなくなってしまった、喪失感もありますが、新たな生き方を考えていく時代なのかなと思います。これからどういう絵を描くか、自分に問いかける機会になりました。予定していた展覧会を開催することができましたが、これは、主催側の方々、お客様、たくさんの人の助けがあって成し得たものでした。作品を見てもらえる環境がある幸せを実感した一年でした。
色々なことが制限されて不自由を感じるなかでも、想像を広げたり、過去の風景へ思いを馳せたり、絵を描くことは自由だなと改めて感じました。最近は記憶のなかの美しい瞬間を意識して描くことが多くなりました。
いま作品を発表することで、不自由さや息苦しさを感じている誰かの心にそっと寄り添えるような絵になっていたらいいなと思います」

 まっさらな和紙に自身でつくった色彩で画想を染め上げる。自分という、内なる他者のため、作品を見てくださる人のために、村山先生は「誰かの心にそっと寄り添えるような絵」を描き続けています。

懐かしい時に思いを馳せるような展覧会になれば

 最新作が揃う5月のギャラリー一枚の繪での個展。最後に見どころをおうかがいしました。

 「フランスへ行く決心がついたのが前回の一枚の繪での個展でした。異なる文化、芸術に触れながら改めて自分の絵と向き合ってみて、より自由に羽を広げて絵を描くようになりました。まだ難しい状況が続きますが、絵を見ることで日常を少し離れ、息をつけるような、懐かしい時に思いを馳せるような展覧会になればと思っています」

 展覧会のサブタイトル「- Les bons temps -」。直訳調になってしまい先生には申し訳ないのですが、「良き時代」。コロナ禍で思うにまかせない現在だからこそ、「息をつけるような、懐かしい時に思いを馳せ」させてくれる、村山先生の、願いにもにた思いに満ちた作品が、ギャラリー一枚の繪の会場に並ぶことでしょう。

 「小さなものの声を聴ける自分でいたいという思いがあります。静寂のなかでなにかを感じてもらえるような絵になっているといいなと思います。
そして、これからどう絵が変化していくか、いつも自分自身が楽しんでいたいと思います。いつも新しくいられるように、感覚を磨いていきたいです」

と、常に新鮮な心持ちで画想を育んでいく村山先生。コロナ禍が収束したら、再びパリへ飛び、さらなる画想をふくらませていくような予感もいたします。村山先生の今後を、ますます注目していきたいと思います!


【展覧会情報】
村山美代子日本画展 - Les bons temps -

2021年5月10日(月)〜22日(土)
11:00〜18:30(日曜休廊 最終日は16:00まで)
銀座 ギャラリー一枚の繪

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