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Hope 〜注目の若手画家〜 #2 湯澤美麻

コンクールや公募団体展など、美術界では毎年のように期待の若手が輩出されています。「Hope」では、主に〈絵の現在 選抜展〉の受賞者で、画家として第一歩を踏み出した新人や若手作家にスポットを当て、制作に際して何を思い絵筆をふるっているのか、また、画家になるまでのことから、これからの展望などをご紹介します。
前回はこちら Hope 〜注目の若手画家〜 #1 河原 裕 >>

コロナ禍と画家と作品と 〜自粛生活中の絵(画想)のそだて方〜 Vol.2 鎮西直秀先生の場合

湯澤美麻先生

絵の重要性を再認識したコロナ禍の1年

 「Hope」第2回は、湯澤美麻(ゆざわ・みま)先生。
湯澤先生は、茨城県水戸市生まれ。筑波大学大学院人間総合研究科芸術専攻を修了(博士)。大学院在学中から二紀展に出品、期待の若手画家を輩出している雪梁舎フィレンツェ賞では佳作を受賞(2012年)。茨城県芸術祭美術展覧会で優賞(2012、14年)、特賞(2013年)。2015年には、中札内村北の大地ビエンナーレで佳作を受賞し、17年は「美術新人賞デビュー」入選(19年も入選)。そして、2018年、一枚の繪主催、絵の現在 第43回 選抜展で銀賞受賞されました。大学院修了後以降は、個展やコレクターが注目するグループ展などに出品される気鋭の若手画家です。

「コロナ禍でもグループ展に出品させていただいたりしていましたが、延期や中止になったものもありました。その一方で、雑誌に掲載していただく機会は、前年よりも多い一年となりました。絵画教室も休みがありながらも、気をつけながら行っていました」

 昨年から続く新型コロナウイルスによる猛威は、美術界も大きな打撃を受け、湯澤先生の出品されたグループ展も、延期や中止の憂き目にあっていました。が、期待の現れが反映して、美術誌で取り上げられることが増えたとのこと(昨年1年と現在〈2月末〉まで、「一枚の繪」を含め9回も取り上げられました!)。
周囲の期待とともに、自身も、展覧会や公募展などでますます活躍の場が広がっていたはずだったこの一年は、忸怩たる思いがあったことと思います。

「絵とは何かということについては、コロナ禍を経てその重要性を再認識しました。絵に限らず文化的なものすべてに共通することですが、今回のような非常時では優先順位としては低くなります。食べるなどの行為と比較して、文化的なものはなくても生きていくことはできる。それでも、食べて寝ての繰り返しだけでは、体の健康は保てても、心はすさんでいく。人間が人間らしく心豊かに生きていくためには、やはり必要なものだと感じました。
 私自身は、絵を描くという行為があってよかったと、コロナ禍の自粛期間を経て改めて思いました。世の中がどうであっても、絵の中は自由で、どこへでも行くことができます。一枚一枚どうしたらいい表現になるかと考えながら描き進めていく行為は、毎日飽くことなく変化を与えてくれました。絵は、自分が投げかけることに対して、その都度しっかりとこたえてくれ、そうしたやりとりは不安な毎日の中で心の支えとなりました。
 作品を発表することについては、描いたものを自分の中で完結することなく、その先につなげていくために重要なことだと改めて感じました。特に展覧会については、自分の作品を客観的に見つめる機会になりますし、はやく落ち着いて鑑賞できるような状況になってほしいと思います」

 現在も続くコロナ禍。絵を描くこと、作品発表することにはどういう意味があるのかと、難しいご質問をしたところ、このような力強いおこたえをいただきました。
 絵画教室を休まざるをえなくなったり、外出自粛を余儀なくされた期間。「ほぼ外に出ることがなかったので、部屋でできるストレッチを始めた」という湯澤先生。モチーフにされている蒼天の空のもと、無限に広がる光景を取材に行く準備はできているなと感じました。

 

コロナ禍と画家と作品と 〜自粛生活中の絵(画想)のそだて方〜 Vol.2 鎮西直秀先生の場合

『煌々』 油彩F30号(絵の現在 第43回 選抜展 銀賞受賞作)

コロナ禍と画家と作品と 〜自粛生活中の絵(画想)のそだて方〜 Vol.2 鎮西直秀先生の場合

『eternal planet』 油彩P6号
(「一枚の繪」2020年4・5月号掲載作品)

こちらの作品はオンラインショップでお買い求めいただけます

コロナ禍と画家と作品と 〜自粛生活中の絵(画想)のそだて方〜 Vol.2 鎮西直秀先生の場合

『月の下』 油彩M10号
(「一枚の繪」2020年8・9月号掲載作品)

こちらの作品はオンラインショップでお買い求めいただけます

コロナ禍と画家と作品と 〜自粛生活中の絵(画想)のそだて方〜 Vol.2 鎮西直秀先生の場合

展覧会に向けて、日々の制作は続く。

コロナ禍と画家と作品と 〜自粛生活中の絵(画想)のそだて方〜 Vol.2 鎮西直秀先生の場合

『さえずり』 油彩F6号
(「一枚の繪」2021年4・5月号掲載作品)

「生きるということが背景にあって描いている」

「広々とした風景が好きで、キャンバスという限られた空間とは相反したそれを、画面上で表現できたらかっこいいなと感じたからだったと思います。あとは、子供の頃からある、どこか遠くの世界に行きたい願望が、自然と出ているのもあるかもしれません。今でもそうですが、常に漠然とどこかに行きたい気持ちがあります。具体的な場所やはっきりしたイメージはないのですが、ぼんやりと憧れる風景があるような気がします。それを探しつつ、絵画の中のその先を、イメージできるような作品が描けたらと思います。
 大作でも小品でも大きなテーマは共通していると思います。毎回強く意識しているわけではないですが、全体を通してみると、生きるということが背景にあって描いているように思います。元々人間の生きるということについて、いろいろと考えがちなところがあるので、結局そのあたりがじんわり滲み出ているように思います」

 画家にはたぶん、対象と自分との間に画想の醸成される空間があって、湯澤先生のそこには「人間の生きるということ」とはという根源的な問が存在していて、そのこたえとして、人物画や天高く蒼く澄み渡る大自然の情景がタブローに表出されています。この問があるからこそ、生命力を感じさせ、見るものをも包み込むような風景作品が生まれるのかもしれません。選抜展で銀賞を受賞された作品『煌々』には、そのエッセンスが前面に表れているように思えてなりません。

 

対象の美を伝える、対象への思いを伝える

「モチーフは風景や人物と、大作でも小品でも変わりはないですが、大作では自画像、小品ではモデルさんを描くことが多いです。大作の場合、小品では断片的にしか見せられないものを、一枚でうまくまとめて伝えられたらと思って取り組んでいます。そのため、大作はより主観的なイメージになるので、自画像の方が自分でも入りやすくより伝えやすい気がしています。一方小品の方は、それよりも引いて、伝わることよりも自由に感じ取ってもらいたいと思うので、冷静にかつ客観的に捉えられる他者を描いています。また、空間構成についても、同じ理由から、小品は複雑すぎずに、大作の方がより空間構成を練ってから描いています。
 最近では、ポイントとなる色を決めてから描くことを意識しています。控えめな色が好きでついいつも同じように使ってしまうのですが、それでは作品における色の幅が伸びないように感じたので、意識しないと使わないような色をあらかじめポイントとして設定して、描くことを試みています」

表現の上で日々試行錯誤をして常に新しい作品を生み出している湯澤先生。よく描かれる人物や風景以外のモチーフでは、

「雑貨やアクセサリーなど、普段部屋に飾っているものの中から選んで描いたりもします。モチーフとする静物は、改めて用意するのではなく、手持ちのものを描くことが多いです。モデルさんの衣装なども含め、自分が日常の中で好んで収集したものの中から引き出しています」

とのこと。とはいえやはり、よく描かれるのは「空」。

「風景を描くにしろ人物を描くにしろ、空はよく取り入れて描きます。子供の頃から空を眺めるのが好きで、空に強い憧れがあったからだと思います」

「憧れ」や「願望」というのは、脳裏にイメージが深く刻まれているもので、湯澤先生にとってはそのひとつが「空」。見上げると眼の先に広がる空、大気の微粒子をつぶさに描くことが画家の至福のひと時なのかもしれません。
 湯澤先生が大学院でテーマにされていたカスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(1774-1840年、ドイツロマン主義の画家)は、空が描かれた作品が印象的です。『雲海の上の旅人』という作品では、杖(ステッキ)を持ち画面に背を向けた男性が、岩山の山頂のようなところから遠くの山、さらにその先の空を眺めています。湯澤先生はもしかしたら、『雲海の上の旅人』が見つめる彼方―「その先を、イメージできるような」光景を思い描いているのかもしれません。

「博士課程でテーマとしたカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの作品には、やはり影響を受け、それによって構図の捉え方など自分の作品が大きく変化したように思います」

 

見ているうちにじわじわ何かが出てくるような作品を

これから、どのような作品を描いていきたいかをおうかがいしたところ、

「これまでもそうですが、その時々で気になったものを描いているので、まずは新しい発見を日常の中でできたらいいなと思います。常に同じ場所にいるのではなく、少しずつでも変化していけるように、様々なものに挑戦していけたらと思います」

「新しい発見」を、日々こころみていらっしゃる湯澤先生。これまで描かれてきた作品も素晴らしいのですが、創作家の、常に新しい作品を描く姿勢は、今後ますます楽しみです。

「ぱっと見て強く印象に残る面白さはないかもしれませんが、見ているうちにじわじわ何かが出てくるように、愛情込めて描いています。
一枚一枚愛情を込めて描いているので、表面だけでなくその奥にある作品たちのつぶやきを感じ取ってもらえると嬉しいです」

 今年、コロナ禍がおさまれば、秋には二紀会の展覧会が催され、大作が見られます。それまでに小品は、展示が予定されています。じっと作品を見つめていると、「生きる」とは何かという問のこたえが、タブローからじわじわと見えてくることでしょう。湯澤作品の画面の「奥にある作品たちのつぶやき」を実際にご覧いただき、耳をそばだててみてください!

※ 湯澤先生の新作は、3月19日発売の「一枚の繪」4・5月号に掲載されます。


◎湯澤先生の作品を実際にご覧になるには

一枚の繪4・5月号コレクション展 
2021年3月29日(月)〜4月10日(土)
11:00〜18:30(日曜休廊 最終日は17:00まで)
銀座 ギャラリー一枚の繪

「絵画の筑波賞」展2021 (つくば展)
6月5日(土)〜20日(日)
11:00〜18:00(最終日は15:00まで)
スタジオ'S(茨城県つくば市二の宮1-23-6
〈関彰商事(株)つくば本社内〉)
HP:https://sekishostudios.jp/

「絵画の筑波賞」展2021 (池袋展)
6月23日(水)〜29日(火)
10:00〜19:30(最終日は16:00まで)
西武池袋本店 本館6階(中央B7)アート・ギャラリー
03(5949)5348 〈直通電話〉
「絵画の筑波賞」HP : http://tsukuba-art-award.org

※「絵画の筑波賞」展2021の賞選考はこれからになります。(3/9現在)
・ 開催日や開廊時間は都合により変更になる場合がございます。

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