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DO繪 SLが走り抜ける風景を描く
1900円(税別)210×210mm 全120ページ
DO繪 SLが走り抜ける風景を描く
 

風景画家 服部先生のわかりやすい解説

・長年描きためた四季折々、日本全国のSLの風景作品を多数掲載。
・描くうえで大切なポイントを抜き出し、わかりやすく掲載。
・SLが走る風景を実際の制作手順に従って、ノウハウを伝授。
・使用色をリストアップ。実際に使用した絵具の色を紹介します。

 第1章 SLが走る風景の描き方
 第2章 SLの描き方SLの描き方
 第3章 なつかしい市街電車の風景を描く
 第4章 SL情報
 第5章 SLの基礎知識と描き方
 
みなさまからのお便りです
この本の著者である服部さん自身のSLに対する表現の繊細さと周囲の風景とのマッチングというか、バランス性が実に巧みに気づかい表現されているかという点が私はすばらしいと思いました。
雪の中を全力でかけ抜けていくSLの力強さ、自然の中にドラフト音を響かせて走行していく勇壮さがSLの姿。表現の豊かさに感動しました。
この本を通してSLをもっと大切に保存したり、走行させたりしてSLの存在感をより多くの人に知ってほしいと思いました。
大井川鐡道のSLに対する経営哲学、思想はすごいものがあると私は思っています。大井川を渡るSLの姿は若者が意気揚々と走行していく感じ(イメージ)がします。
(静岡県磐田市 50代男性)
 
好評のDO絵シリーズ
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実践的な細かいノウハウをふんだんに掲載
DO繪 SLが走り抜ける風景を描く
 
風景画を描くための段階を追ったわかりやすい解説
風景画を描くための段階を追ったわかりやすい解説
 
風景画を描くための段階を追ったわかりやすい解説
 
回想−蒸気機関車− 服部譲司

【絵になる蒸気機関車】

 もう何十年も前のある年の冬、仕事で北海道の士別市へ出掛けた。士別市は旭川の北に位置した豪雪地帯である。札幌から函館本線で旭川、そこから宗谷本線に乗れば楽に行ところであるが当時はまだ蒸気機関車の時代であったため、かなりの時間がかかったはずである。ところが蒸気機関車好きのせいか時間が掛かってうんざりしたという記憶がない。このころは国鉄の近代化によって本州では蒸気機関車が次々に廃止されて電車やディーゼルカーに代わり、一部の機関車が最後の働き場所として北海道に渡っていることは知っていた。車窓からも電化工事が着々と進められているのが分かった。
 休日に函館本線の岩見沢第一機関区へ出掛けた。子供のころから汽車の絵ばかり描いていたので、機関区の風景や蒸気機関車のスケッチをしたかった。岩見沢は石炭輸送の要として発展したところで街より先に駅が作られた。この機関区は北海道最大の機関区であり、最後の機関区でもある。構内をあちこちスケッチしていると、危険なところに入らないよう注意されたが、もっと近くに入って描くことを許され、普段では入れない所からスケッチすることができあり難かった。その時何やら騒々しい音のする工場の前で蒸気機関車が解体されているのを目撃した。ボイラーなどの大型部品は酸素で解体され、足回りや小物部品は荒縄で縛られ山積みされていた。
 日本の産業、経済の原動力として真っ黒になって働いて着た彼らの最後の姿−胸が締めつけられる思いがした。人は蒸気機関車を見るとき、そこにもっとも人間に近い生き物のような神秘性を感じるのではないか、電気機関車、新幹線、バス等に乗り物にない何かがあるに違いない−。
 日本の貴重な文化遺産をこのまま見過ごしてはならない、今のうちに描きためておかなければ−という思いから制作を始めた。函館本線の滝川、小樽築港、倶知安などの機関区が主なスケッチ場所となった。スケッチは鉛筆が主でボールペンやフエルトペン等を使い淡彩で着彩したりした。それらのスケッチをもとに80号の油彩の大作を描き上げ、春の上野の創元展に5〜6年出品した。
 昭和51年最後まで残っていた室蘭本清追分駅の構内入換用の9600(キュウロク)型蒸気機関車もディーゼル機関車に代わり、同年三月ニ日をもって日本の国鉄からすべての蒸気機関車が姿を消した。

【蒸気機関車との再会】

 その忙しい会社人間になっていたので蒸気機関車の絵を描くことも少なくなっていたが、国鉄から姿を消した同じ年の7月、静岡県の多い鉄道で釧路機関区標茶機関支区で廃車になったC11227号機が復活運転を始めるという情報を知った。胸が熱くなった。私と同じ思いをしている人達が大勢いることを実感した瞬間だった。間もなくスケッチを兼ね乗りに行った。久し振りに聞く汽笛、力強いドラフト音そして石炭の匂い−涙が出てきた。
 同社は現在4両のタンク機(機関車と炭水車が一体になっているタイプ)と1両のテンダー機(機関車に炭水車が連結されているタイプ)を保有し、毎日平日は1往復、土日や祝日、春や秋のシーズン中は1〜2往復または3往復運行しており、蒸気機関車の動態保存に計りしれないほど大きな役割を果たしている。
 その後この活動を手本に、かつての国鉄・高木総裁が提唱した「人類の偉大な文化遺産を後世に残すため、一私鉄に頼らずバックアップしよう」の方針のもと国鉄山口線でC57の記念すべき1号機を使って復活運転が始まった。昭和54年のことである。これらの成功が全国各地での復活運転の背景になっている。

【蒸気機関車の復活の裏で】

 国鉄から蒸気機関車が姿を消したあと、せめても展示保存しようという活動が始まり、全国で現在350両近くが公園、学校、駅などで静動保存されている。その中には自治体や地元の愛好家グループによってきれいに保存されているものがある。今復活運転されているのは、それらの中から状態の良いものが復元修理されたもので、幸運な機関車といってよい。
 自動車の定期点検や車検と同様、鉄道車両にもいろいろな検査が義務付けられている。新幹線や電車は幸蔵とともにメンテナンスも合理化されているが、蒸気機関車は従来の検査方式がそのまま踏襲されている。中でも最大なのが全般検査で、一万点以上にも及ぶ部品をすべて解体し点検修理するのだ。これは整った設備、熟練した技術者が揃ってないとできない。釧網本線のC11の復元の録画を見たが、ボイラーの新作、動輪軸受の研磨等々大変な費用と労力とともに、熟練技術者の経験と勘がものをいう世界であった。
このとき責任者が応募してきた若い後継者に持てる技を熱心に教えている姿が印象深かった。
 われわれが蒸気機関車を楽しむ裏では、機関車そのものだけでなく、運転、保守、保線、その他運行に携わる大勢の人達によって支えられているのである。

【蒸気機関車の絵の復活】

 大井川鉄道は静岡県のほぼ中央、南アルプスから流れ出る大井川に沿って、東海道線の金谷(カナヤ)から奥大井の千頭(センズ)までの65kmを走っている。ここは静岡県の茶所「川根茶」の産地、沿線には茶畑が続き茶摘みのシーズンには列車の窓ガラスがキラキラ緑色に反射する。
 この鉄道が復活運転を始めた後、自宅から近いこともあってしばしばスケッチに出掛けるようになった。この時は始めから油彩で描いた。鉄道の絵は相手が動いているので列車の通過時刻をあらかじめ調べておき、2時間ぐらい前から背景を描き、列車が来たら写真を撮って後から絵のなかへ描きいれる方法をとる。
 このころから列車の絵をときどき「一枚の繪」の展覧会に出品させていただきたり、 月刊誌「一枚の繪」へ掲載させていただくようになった。また北海道でのスケッチをもとに油彩で描きはじめた。平成5年が明けて札幌の丸井今井百貨店で個展をさせていただいたとき、油彩の汽車の絵は珍しいとのことでNHKが取材に来られ、その日の午後全道にローカルニュースで放映された。翌日大勢の来場者があり蒸気機関車の根強い人気がありがたかった。
 その後一枚の繪(株)から蒸気機関車の走る風景画の描き方を主とした技法書「DO 繪」の制作の提案をいただいた。好きな仕事なのでお引受したが、列車の運行が観光シーズン中だけ、冬だけ、年によって中止になったりで取材は困難を極め、10ヵ月かけて原稿を描き上げた。描き順の紹介ではカメラマンや編集者のご厄介になったりもした。
平成18年12月「DO繪」のシリーズ「SLが走り抜ける風景を描く」が刊行した。

【蒸気機関車の魅力】

 なぜ蒸気機関車が好きですか−と聞かれても、とっさに出てくる言葉が見つからない。誰でも子供のころは汽車や飛行機が好きで、絵を描いたり模型を作ったりしたでしょう。それが大人になっても治らないだけです−と答えると、男性はみな当たり前のように理解してもらえる。いわゆる機械いじりが好きな人は共感が得られやすい。それが女性にはむずかしいようである。
 あらためて蒸気機関車を眺めてみると誠に美しい。飾り気がなく機能本位で実に合理的に設計されている。石炭を燃やして水を沸かし、その蒸気圧でピストンを作動させ往復運動を回転運動にかえて車輪を回す。
 蒸気機関車の産みの親はイギリス人スティブンソンで、今から200年も前のことであるが、基本的なことは今も変わっていない。コンピューターのコの字もない。ボラーへの水の補給、ブレーキ用の圧縮空気、客車の暖房などすべて蒸気である。バッテリーもなく、灯火の電気は蒸気タービンで発電している。構造は誠に原始的であるがゆえに、人間の200年の知恵が凝縮されているところが大きな魅力である。
 「DO繪」の取材時、岩見沢でベテラン機関手、機関助手にお会いし、色々な苦労話をお聞きした。機関車の特性を良く理解して的確に扱えば、能力以上の力を発揮してくれるが、機嫌をそこなうと大変なことになる。まったく生き物と同じであることを強調されていた。いまでもその余韻が残っている。

風景画を描くための段階を追ったわかりやすい解説
大井川鐵道 田野口駅にて

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