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展覧会プレビュー 展覧会担当者に聞く 展覧会の見どころ
 
金子東日和 油絵展
金子東日和 油絵展
前回の個展から新たに民家の取材をし、その作品を中心に個展を考えて
おりましたが、昨年から取材が出来ない状況が続いているため、今回は
今まで描き溜めてきたスケッチの中からの作品制作となりました。
昔ながらの原風景を楽しんでいただけたら幸いです。   金子東日和
会期   2021年12月15日(水)〜12月21日(火)

会場

伊勢丹新宿店 本館6F アートギャラリー 10:00〜20:00 (最終日は18:00閉場)
TEL 03-3352-1111(代表)
営業日や営業時間は都合により変更になる場合がございます。
作家出席日   会期中毎日(午前11時〜午後6時予定)

 

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金子東日和 油絵展

金子東日和先生(2017年11月号特集の取材より)

金子東日和 油絵展

『白日』 油彩15号(1978年第7回現代洋画精鋭選抜展銅賞受賞作品)

金子東日和 油絵展

『待春小谷村 ―長野県小谷村―』 油彩F4号

金子東日和 油絵展

『山村揺花(岐阜県白川郷)』 油彩P6号

金子東日和 油絵展

『山峡微雨(高知県梼原村』 油彩F6号

金子東日和 油絵展

『晨の滝桜(福島県三春町)』 油彩P30号

取材に出掛けられなかった
コロナ禍の期間

 「昨年から取材が出来ない状況が続いているため、今回は今まで描き溜めてきたスケッチの中からの作品制作となりました。昔ながらの原風景を楽しんでいただけたら幸いです。」(「一枚の繪」21年12・22年1月号個展紹介記事より)

 伊勢丹新宿店では2年ぶりの個展となる金子東日和先生。新型コロナウイルス感染症の影響があり、これまで「描き溜めてきたスケッチの中から」選りすぐられた、画想の醸成された作品を発表することとなりました。
緊急事態宣言、外出制限など、風景画家にとっては仕事が出来なくなってしまったコロナ禍、金子先生ご自身「四十数年茅葺き民家の取材を続けて来て、このコロナ禍の自粛で二年もの間一度も取材に出掛けなかったのは初めて」のことだそうです。

民家を描き続けようと

 金子先生は1946年東京生まれ。画家としての出発は、お父様(日本画家)の影響もあってか日本画を描いていたそうです。古来からの日本画ならではのモチーフともいえる花鳥画や人物を描いていたそうですが、そこから油絵に転向。とまどいはあったのではないかと思いきや、

「日本画も油絵も画風は変らず写実表現が軸になっています。日本画では画面構成で余白を、油絵の方は画面全体の描込みを意識して制作しておりますが、両方とも写実が基本の作品です。
画材は岩絵具(日本画)から油絵具に変りましたが、顔料に膠を使うか油を使うかの違いくらいで、表現方法はそれほど変りませんが、細部を描くのに日本画の筆の方が表現しやすく、彩色筆、面相筆、蒔絵の筆などをそれぞれの場所で使い分けしております」

と、弘法筆を選べど表現は変らずといったところでしょうか。金子作品の、細部にまで情感のひだが感じられる表現の秘密を開陳していただけました。
日本画から油彩画に転向した時期(30歳前後)に、一枚の繪主催・現代洋画精鋭選抜展に挑戦。77年の第6回〜79年の第8回まで3回連続で銅賞を受賞され、その後は「一枚の繪」誌上をはじめ、全国の展覧会場で茅葺き民家の作品を発表し続けていらっしゃいます。
この、茅葺き民家を描き続けることになったとあるエピソードが、受賞のことばとして記事に残っています。

 「『この家は来年の春壊すんだョ!!』制作している私の後から年老いた農夫が声をかけた。
その言葉を聞き、私は秋と冬とに制作に出かけた。そして翌春……。主を失った忠臣のように去年の姿のまま聳えている芽吹き始めた大きな欅を見上げたとき、私は民家を描き続けようと意を新たにした」(「一枚の繪」1978年10月号〈特集 第7回現代洋画精鋭選抜展〉より、受賞コメント)

 四季折々、春から秋はさておき、冬場では屋外での取材ですと手がかじかむような寒さのなか、雪積もる茅葺きを前に絵筆を動かしてきた画家にとって、ここを描くということは使命なのだ、という天啓にうたれたのでしょう。「意を新たにし」、(自分が)描き遺していくしかないという思いが絵筆を握る掌に漲っていったことは想像にかたくありません。ここに、消えゆく茅葺き民家を描く郷愁の風景画家・金子東日和が誕生したのです。

向井画風にとらわれない民家作品を

 茅葺き民家を描く画家には、向井潤吉という先達がいます。

 「民家の画家・向井潤吉先生の、民家を描き通した画家人生は私の大きな目標でしたが、向井画風を追いかけた他の画家の描いた民家の作品を見て来て、私は逆の、向井画風にとらわれない民家作品を描いて来ました。それが現在の作品になっております。
向井先生とは岩手県の民話の里・遠野で御会いしたことがあります。春まだ浅い遠野を訪れた日、その夜から降り出した雪が翌日の朝には遠野の風景を銀世界に一変させ、思いも掛けない雪景色の絶好の取材機会に恵まれました。早朝から晴れ渡った雪の遠野。その取材中、偶然に向井先生との初めての出会いがありました」

 油彩の持つ堅牢さが画風にも判然と生かされた向井潤吉。金子先生は、向井潤吉という大画家を尊敬するが故に「逆」をいったことはいうまでもなく、また、「向井画風にとらわれない」茅葺き民家を描くことができたのは、若き日に描いた日本画の影響もあるではないかと思うのは考えすぎでしょうか。日本の風土を十全に描いた金子作品に見られる湿潤な空間表現(画面構成による余白の空間)は、どこか没骨とした、横山大観の空間表現のそれを遠く想起させるのは気のせいとは思えないような(少し強引ではあるにしても)……。
日本固有のといってもよい茅葺き民家を描く金子先生には、無意識裡に、画家のそれまでに醸成されてきた美的直感から、温暖湿潤な日本の風土を描くことができたのかもしれません。その、郷愁の日本の美が染筆された作品の数々が、2年の間を隔てて今冬、伊勢丹新宿店のアートギャラリーでたっぷりと披露されるのです。
とはいえ茅葺き民家は年を追うごとに減っていっていることは事実で、

「茅葺き民家を個人で維持してゆくのは、これからはさらに困難になると思います。今後、民家が残されて行くという形は、世界文化遺産に指定されている岐阜県の白川郷や、福島県下郷町の大内宿、京都美山町の茅葺きの里の北集落のように、国や県、あるいは市町村で文化財や伝統的建造物群保存地区に指定して、そこにある茅葺き民家で暮しを営みながら、集落ごとに保存されて行くと思います」

向井なき今、金子先生の描くタブローの中だけにこれらの情景は描き残されてゆくのです。

日本の原風景を描き残す

 「日本のどこにでも見られた茅葺き屋根の民家。気候風土、文化等によって造られた屋根の形は、それぞれに独特な建築物だったが、1980年代ころから急速にその姿を消して行きました。
日本の原風景といわれる茅葺き民家の佇む風景、原風景にも色々な形がありますが、農山村に息づく茅葺き民家の姿には、原風景の中でも特に郷愁を誘われるといいます。
美しい形の茅葺き屋根の民家が姿を消し、その姿を消した民家の数だけ日本の原風景も姿を消して行く。
一度失われたら二度と戻らない貴重な建物が、原風景が心に残ってくれたらと思っております」

 金子先生の日本の原風景を描き遺す旅に終わりはありません。個展はその道標として開催されていきます。コロナ禍に見舞われた昨年から今年にかけての成果は、時が小休止したかのように、時代が静かなひとときをおくった間にアトリエで描かれた、コロナ禍直前の郷愁の原風景。伊勢丹新宿店の会場は、去りがたいほどの懐かしい空間に満ちています。忘れてはならない「日本の原風景」を、目に焼き付けに足を運ばずにはいられない。

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