心が暗くなる時こそ
絵に向かっていくのが画家
絵画教室や予備校での美術講師もつとめる花岡先生。緊急時代宣言が解除されて予備校などが再開された直後は、なかなか感覚がついていかなったそうです。
しかし、画家としての仕事は着々とこなしていかれ、「制作中心の日々が過ご」すことで、「画家の役割」を果たすために、自信を持って全うできたご様子。
その成果が観られるのも、今展の見どころではないでしょうか。
もちろん、外出自粛期間中は制作ばかりしていたわけではないので、制作以外のことをおうかがいすると、
「毎日1時間ぐらいウォーキングしていました。家の近くに入江があって海沿いに土手があるのですがヘッドホンでアングラ(ブラジルのメタルバンド)を聞きながら歩いていました。漁船が停泊していて海鳥があちこちにいるので飽きませんでしたね」
という花岡先生。ロック(ヘビーメタル)は自身、ギターでそれらの楽曲を弾くほど傾倒している音楽。自然の光景を目にしながら、ギャップのある音楽を聴いているのもまた、花岡先生の世界観を形成するビタミンのようなものなのかと想像してしまいます。 そうしたウォーキングの延長線上にあるのかどうか、今展では『厳島神社』の作品を観ることができます。地元(広島)の風景を描く時に思い抱くことは、「昔その場所に行った時の自分と対話する思いです」という花岡先生。時空を隔てた世界を表現するような心持ちでもあるのでしょうか。
物語世界を構築する
さまざまなエッセンス
花岡作品といえば「王女」が登場する物語世界の連作があります。その世界を構築するためのヒントのようなものはあるのでしょうか。
以前の取材では「私の女性像にはいろんなルーツがある。ダ・ヴィンチやボッティチェルリ、クリムト、エゴン・シーレ、それから浮世絵……」とおっしゃていた花岡先生。これまで追い求めてきた歴史的名画の数々の蓄積を身に着けてきた上に更に、現代のテレビドラマからの新たなエッセンスまでをも抽出して、 花岡先生にしか描けない作品をキャンバスに表していっています。
8月の広島は平和記念式典をはじめ、さまざまなイベントが催される時期。コロナ禍のなかいつもとは違う令和2年の夏ですが、花岡先生の作品や、地元出身・在住の画家たちの絵画がならぶ、福屋八丁堀本店7階の美術画廊でぜひご覧ください。絵画の持つ、観る者の心を時に和やかに、時に元気を与えてくれることでしょう。 |
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絵の現在第34回選抜展受賞記事より(「一枚の繪」2005年7月号)。「制作に疲れると趣味のギターを弾く。ロック好き。」という花岡先生。花岡先生の絵画(制作)
とロック(ヘビーメタル)の相性は心地よい振幅があってよさそう。 |
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『横たわる王女』 テンペラF10号 |
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『厳島神社』 油彩F4号 |
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