「愛情の湧く対象を描きたいです。モチーフの魅力が絵の中に表現できて、それが見る人にも伝わり、好きになってもらえたら嬉しいです。また、共感でも、それぞれに違う解釈でもいいので、ストーリーを想起させる絵、一瞬動き出すような絵が理想です」
二科会の会友として、今年の第104回二科展に作品を出品する工藤絵里子先生が、国立新美術館で開催される二科展終了後の9月23日から、ギャラリー Olive eyeで個展を開催します。多彩なモチーフで観る者の心を時に和ませ、時に楽しませてくれる作品を発表している工藤先生。魅力的なモチーフが動き出すような、絵の中で展開される「ストーリー」を、今展でも私たちに見せてくれるようです。
絵画教室の先生との出会いから
工藤先生は、青森県弘前市生まれ。弘前高校(卒業生には奈良美智先生がいらっしゃいます)から、大学は美大ではなく、東京都内の一般大学の文学部(英米文学科)に進学しました。中学生の頃まで描いていた絵を、高校進学後はすっかり描かなくなってしまったそうです。
文学部での学生生活のなかで、自分は何かしら美術の道に進みたいのではないかと思い、かといってこれから美大への進学は難しい(しばらく絵筆を握っていなかった)ということもあり、明治学院大学文学部の芸術学科への編入試験を受けて合格(中山公男ゼミ)。大学では美術史を学び、描画については絵画教室で研鑽を積もうと足を踏み入れた先の絵画教室での出会いが、工藤先生の画家への扉を開くことになりました。
「その絵画教室で出会った先生から、まだ何者でもない私に、習い事感覚ではなくプロ意識を持って描くよう指導されたんです。まだ若く世間知らずだった私は、絵画以上に、その恩師から人生も教わり今日に至っています」
その恩師の後押しで挑戦した二科展で、現在は会友として活躍(2006年初入選)。2010年に特選を受賞し、翌年会友に推挙。2017年には会友賞を受賞し、着実に評価を得てきています。
その節目ともなるのが、2018年第3回星乃珈琲店絵画コンテスト優秀賞。所属している公募展以外での受賞は、画家の目指す方向性の確かさを示したといえましょう。
わかりやすく面白い絵が「絵里子の絵」のコンセプト
冒頭でも述べましたが、このOlive eyeでの個展は、二科展の東京開催が終わった直後。展示では、その二科展出品作に加えて、星乃珈琲店絵画コンテストで優秀賞を受賞した作品を、巡回展示中の店舗からお借りして展示し、新作の数々とともに観ることができるとのこと。工藤先生のエッセンスが凝縮されたギャラリーは、さまざまな「ストーリーを想起させる絵、一瞬(絵からモチーフが)動き出すような」作品に満ちた展示空間になりそうです。
「お話が聞こえるような絵、美しい一瞬を切り取るような絵、わかりやすく面白い絵が『絵里子の絵』のコンセプト。今展では、動物のモチーフが多いかもしれません」
「絵里子の絵」に耳を澄まして、モチーフから発せられる声を聴くのもまた、面白い鑑賞体験となるでしょう。絵を観るだけでなく聴く、工藤先生の個展。ぜひご覧くださいませ。
工藤絵里子先生のホームページ「絵里子画廊」
https://home.erikogaro.com/ |