赤や緑の原色、そして蛍光色やラメの輝きがキャンバスを埋めつくす。一度見たら網膜に焼きつく鮮烈な色彩。しかし、その世界にはどこか優しさが漂っている。
「僕らの作品の基本的なコンセプトは“祝福”です」
観た人に喜びや楽しさを届けだいという思いがそこにはある。
フジヨシブラザーズはその名の通り、藤芳太一郎さんとひとつ違いの弟、幸太郎さんの兄弟ユニットである。熊本で生まれ育った彼らが絵を描き出したのは上京してから。初めての東京で二人は飢えた獣のように知識をむさぼる。
「いろんな美術館を回っているうちに、無性に描いてみたくなりました」
どちらともなく自然に描き始めていた。しかし、絵の知識はまったくない。とりあえず絵具を買い、色を混ぜて塗る手探りの日々。それでも人物、動物、抽象画、描けるものは何でも挑戦し、一日一点を心に決めて描き続けていった。
「油絵具や岩絵具、さまざまな絵具を試しましたが、描くスピードに追いついてこない。だから、必然的に乾燥の速いアクリル絵具を選んでいました」
次から次へ湧き出すイメージ。それは今でも変わらないと言う。野性味溢れる魅力、型にはまらない自由奔放な画面構成。作品に宿るのはアカデミックな環境にしばられていては決して生まれ得ない独特な表現力。
「最初は別々に描いていました。雑誌の仕事を依頼されたとき、初めて二人でコラボレーションしたのがきっかけで、最近はすべて合作です」
初めての合作はエキサイティングな経験だった。兄弟といえお互いに自分にはない色づかい。自分にはない才能が融合してゆく新鮮さ。作品に幅が広がってゆくことを確信した。
しかし結成してから3年後、大きな衝突があった。個展「パノラマアイランド」を開催したときのこと。ロールキャンバスをつなげて描き、それを迷路のようにギャラリーにぶらさげた。
「そのときは毎日衝突していました。お互いの描いた絵を塗りつぶして、その上から描くということのくり返し。それを100メートル続けたことが、今も一緒にやっていけている理由かもしれません。ぶつかっていくうちに、微妙なお互いの考え方やニュアンスを肌で感じるようになりました」
この息の合ったコンビネーションが今のライブパフォーマンスに繋がっていく。華道家とのコラボレーション。生演奏に合わせて絵を描くパフォーマンス。観客を前に即興で作品を描くことはスリリングで魅力的だという。コンビネーションも真骨頂がここで思う存分発揮される。
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フジヨシブラザーズ |
「何を描くかは打ち合わせをしません。おおまかなイメージだけを共有させておきます。だから当日のお客さんの雰囲気や僕たちのテンションで作品が全然違ってきます。制作している途中で位置を入れ替わると、彼が描いてきたものが目前に表れて『おっ、こう来たか』と刺激されます」
さまざまな知識、経験を貪欲に吸収し、彼らの牙はますます鋭く研ぎ澄まされてゆく。ユニットとしての可能性に限りはない。 |